不良セクタの確認より、ほかに控えのないデータを守るほうが先です。初期化、修復、全域の再検査はしないでください。
目次全14章から探す
- 旧HDD-SCANの配布と利用の案内は終了しています。以前の製品説明では、不良セクタ検査、範囲指定、LBA表示、結果の保存が紹介されていました。データを復元する機能ではありません。
- 検査マップの色や速度だけで「物理的な傷」「データが戻る可能性」を断定できません。異常の原因は接続や電源にもあります。
- いまの状態確認は、S.M.A.R.T.の表示やメーカーの診断ツールで始められます。MIRA-SCANは当サイトを運営する株式会社スーホが開発しているツールで、Windows用に無料で公開しています。
不良セクタ検査を始める前に、HDDの症状を確認
「不良セクタがあるか確かめたい」と思ったとき、最初の行動は必ずしもスキャンではありません。HDDからカチカチ音・擦れる音がする、コピー中にドライブが消える、同じ場所で何度も読み込みが止まる場合、診断のための追加読み取りが負担となることがあります。失いたくないデータが入っているなら、通電を繰り返さず、原本を変更する操作も避けてください。
| いまの状態 | 検査の判断 | 先にすること |
|---|---|---|
| 異音、落下後の不調、異常な熱、接続断 | 中止 | 安全に停止し、データ保全方法・専門相談を検討 |
| ファイルが読めるが、コピー失敗・極端な遅さがある | 全面検査を保留 | 失いたくないデータを優先し、無理な再試行を控える |
| 安定して動作し、別のバックアップがある | 目的を限定して検討 | 対象ドライブを確認し、まず非破壊の情報確認 |
| 用途不明のHDD・中古購入品・データ不要 | 製品仕様に沿って検査 | 記録内容と保証条件を確認。必要ならメーカー診断 |
すでに異常がある場合はHDD故障の症状と確認方法を先に確認してください。復旧ソフトの実行、初期化、CHKDSKを急ぐ必要はありません。
旧HDD-SCANの「不良セクタ検査」は何を表示したか
対象ドライブの選択・全域/指定範囲の読み取り
旧HDD-SCANの製品説明では、物理ドライブか論理ドライブを選び、全体の領域、または開始・終了位置を指定して検査できると案内していました。特定の範囲だけを確かめ直し、結果をログに残せる点が特徴でした。画面や操作の順序は当時のWindowsを前提にしたもので、いまのWindowsで動作を確かめて再現したものではありません。
ブロックごとの色分けと、読めない位置の記録
検査マップは、一定の領域をまとめたブロック単位で読み取り状況を視覚化する仕組みです。ただし、1マスがHDDの物理セクタ1個に対応するとは限りません。色と判定閾値もソフトのバージョンや設定で異なります。以前の製品説明だけでは、それぞれの色が何ミリ秒の応答を表すのか、どのエラーコードに当たるのかまでは分かりません。
LBAの表示と結果レポート
以前の製品説明には、エラー位置のLBA(Logical Block Address、論理ブロックアドレス)を出力する機能と、結果の保存が載っています。LBAが分かれば、ホストから見たどの論理位置で問題が観測されたかを記録できます。しかし、それだけでプラッタの物理的な傷の位置が確定するわけではありません。旧HDD-SCAN全体の機能とMIRA-SCANの違いも参照してください。
不良セクタ・読み取り遅延・接続エラーは同じではない
読めないセクタは、必ずしも外から見える物理的な傷ではない
HDDではドライブの誤り訂正や再試行を経てもデータを返せない場合があります。観測された読み取り失敗は、媒体の劣化、ヘッドなどの機械的な問題、電源・接続、ファームウェア、OS側の問題など複数の原因が関係することがあります。1回の検査だけで「プラッタに傷がある」と断定するのは不正確です。
遅いブロックは「不良セクタ確定」ではない
読み取り時間は、再試行に加えてUSB変換回路、ケーブル、電源、他のプロセスのI/O、温度などに左右されます。遅い区間が連続する場合は注意が必要ですが、色が黄色になった=データが破損したと判断しないでください。前回の検査結果と比べて、遅い区間が増えているかを見ます。
データが見えることと、同じドライブを使い続けてよいことは別
一部のファイルを読めたとしても、後で別の領域の読み取りが失敗する可能性があります。画像や文書をバックアップできた場合も、保存先で実際に開けること、必要なファイルが揃っていることを確かめてください。
LBA番号が分かると何ができる? できない?
LBAはディスクの論理アドレス
ホストが読み書きを指定するために用いるブロック番号がLBAです。一般的な512バイト論理セクタと4,096バイト論理セクタでは、同じ番号差が意味するデータ量も変わります。値をファイル容量や「何GB付近」と読み替えるときは、デバイスが報告する論理ブロックサイズを確認する必要があります。
ドライブ内部の代替処理があるため、LBAと物理位置は一致しない
HDD内部では欠陥管理や代替セクタへの再割り当てが行われる場合があります。したがってLBA番号が示すのは利用者側の論理位置であり、通常の診断結果だけから実際のヘッド・トラック・プラッタ面の場所を特定できません。
ログを残すなら番号だけでなく検査条件も
ドライブの型番・容量・接続方式・実行日時・異音の有無・対象範囲・エラーメッセージをセットで記録すると、状況を比較しやすくなります。ログにシリアル番号が含まれる場合、公開掲示板へそのまま投稿しないようにしてください。
検査マップの結果をどう判断するか
| 表示・症状の例 | 考えられる状態 | 安全な次の行動 |
|---|---|---|
| 全域が読め、エラー表示なし | その検査条件では読めた | 故障ゼロの証明ではない。バックアップは維持 |
| 一部だけ読み取りが極端に遅い | 再試行・接続要因・媒体劣化など | 連続再検査せず、症状とS.M.A.R.T.を併せて判断 |
| 特定LBA付近で読み取り失敗 | 同範囲へのアクセスに問題 | データが必要なら原本のスキャンを広げない |
| 検査途中でドライブが消える | 電源・ケース・接続または本体不良 | 中断。再接続の繰り返しを避ける |
| カチカチ音とともに進まない | 機械的な障害の可能性 | 電源を切り、重要データがあれば専門家へ相談 |
表示色を「緑は安全・赤は破損」と単純化せず、ソフトのヘルプと実際のエラーの意味を確認してください。不良セクタの技術的な仕組みは用語辞典で詳しく解説しています。
S.M.A.R.T.の05・C5・C6と照合する
05:代替処理済みセクタ数
読み取りなどの問題により予備領域への割り当てが行われた履歴の参考値です。値が0でないことや増加傾向は調査材料になりますが、メーカーごとにRAW値の扱いが異なり、同じ数値をすべてのモデルで比較できません。
C5:代替処理保留中のセクタ数
読み取りが不安定で再評価を待つセクタなどを示す指標です。C5が増えている場合、無理な全面読み取りを続ける前にデータ保護を考えます。
C6:回復不可能セクタ数
オフラインテストなどで訂正できないエラーが観測されたことを示すことがあります。表示の意味と単位は機種仕様に依存するため、変化と他の症状を一緒に見ます。
C7:インターフェース伝送エラーは媒体不良と別
一部のATAドライブではC7が伝送エラーの参考になります。ケーブルや接続状況が疑われるとき、C7を05・C5・C6と同じ意味で読まないでください。USB外付けケースではS.M.A.R.T.の項目が取得できないこともあります。
CrystalDiskInfo公式案内でもHDDの健康状態判定に05・C5・C6が挙げられています。一方、「正常」表示は将来の故障が起きない保証ではありません。詳しい意味はS.M.A.R.T.とは?を参照してください。CrystalDiskInfo公式の健康状態説明も確認できます。
検査前のチェックリスト:対象を間違えず、原本を守る
- 保存データを確認:失うと困るファイルのバックアップはあるか。
- 状態を確認:異音・発熱・切断・極端な読み込み低下がないか。
- ドライブを確認:型番・容量・接続先を照合し、別のHDDを誤選択しない。
- 検査目的を限定:健康情報の確認だけで足りるなら全面スキャンを省く。
- 非破壊の操作を選ぶ:書き込み・ゼロフィル・修復・消去項目を選ばない。
- 結果の保存先を別に:検査ログを不調なHDD自身へ保存しない。
すでに読み取り不良がある原本に、全面スキャンをかけて原因を確かめる必要はありません。失いたくないデータがその1台にしかないなら、診断の前に保全の方針を決めてください。
MIRA-SCANの位置づけと、いま使える確認方法
旧HDD-SCANとは別の診断ソフト
旧HDD-SCANは過去のWindows環境を前提としたソフトで、配布と利用の案内は終了しています。MIRA-SCANは、当サイトを運営する株式会社スーホが新しく開発している診断ツールで、旧プログラムの更新版ではありません。いまはv0.3.9をWindows用に無料で公開しています。
まずドライブ情報とS.M.A.R.T.を確認する
いま状態を確かめるなら、S.M.A.R.T.を表示できるツール(前述のCrystalDiskInfoなど)や、ドライブのメーカーの診断ツール(次の章のSeaToolsなど)で、対象ドライブの情報と健康状態を先に見ます。MIRA-SCANも、ドライブ情報、健康状態とS.M.A.R.T.、履歴・レポートを確かめるためのツールです。読み取り検査が必要な場合も、始める前に機器の安定性とバックアップの状況を確かめます。診断とデータ復元は別の作業で、MIRA-SCANに削除ファイルを戻す機能はありません。
MIRA-SCANの開発状況と画面の説明
機能とダウンロードは「MIRA-SCANとは?」に、画面に沿った操作の流れは「MIRA-SCANの使い方」にまとめています。旧HDD-SCANの操作手順を、MIRA-SCANにそのまま当てはめないでください。
MIRA-SCANは、当サイトを運営する株式会社スーホが開発している自社の診断ツールです。この記事は、その関係を明らかにしたうえで紹介しています。個々の機器での診断結果、復旧率、将来の故障予測を保証するものではありません。
CHKDSK・全面検査・ゼロフィルは何が違う?
CHKDSK /r はファイルシステムの修正を伴う
WindowsのCHKDSK /rは不良セクタを調べ、読める情報の回復を試みる機能です。/fの動作を含むため、ファイルシステムの状態を変える処理でもあります。物理的に壊れたHDDを修理するコマンドではありません。失いたくないデータが入った不安定な原本では、先に実行しないでください。詳しくはMicrosoft LearnのCHKDSK仕様を参照してください。
長時間の読み取り検査は、データを守る操作とは限らない
メーカーの長時間テストは広範囲のセクタを読み取ります。状態が健全な機器の保守には利用できますが、既に故障が疑われる機器では通電時間と読み取り回数が増えます。SeagateのSeaToolsでも短時間テストと全域を読むLong Generic Testが分かれています。Seagate公式診断マニュアルを確認してください。
ゼロフィル・初期化は診断ではなくデータ消去につながる
「不良セクタを直す」という説明と共に全域へのゼロ書き込みやフォーマットを勧める情報があります。しかし、データ領域を上書きすると、元のデータを取り出せる見込みがなくなるおそれがあります。データが必要な場合は実行せず、データ消去が目的なら、診断とは分けてデータ消去ガイドを参照してください。
読み取りエラーが出たときの順序:修復より保全
複製できる状態なら、原本への操作を減らす
ディスクが安定して読み取れるうちに、失いたくないファイルから順に別の媒体へコピーします。コピー中に停止やエラーが頻発する場合は強行せず、作業方針を見直します。「すべてのセクタを再検査してからコピーする」という順番は適切とは限りません。
広範囲の障害では専用の読み出し方法が必要なことも
GNU ddrescueは読み取りエラーのある媒体から読み出せる範囲を優先的にコピーするためのツールですが、コピー先の上書き事故を起こす危険もあり、誰にでも簡単に勧められるものではありません。操作に慣れていない場合やデータの価値が高い場合は専門家への相談を検討してください。GNU ddrescue公式マニュアルでも、不良のある原本を修復しようとせず、先にコピーを作るよう説明されています。
「直ったように見える」HDDを唯一の保管先に戻さない
再試行で読めるようになっても、劣化の原因がなくなったとは限りません。S.M.A.R.T.警告や読み取り失敗を記録したHDDは、大切なデータの唯一の保存先として使い続けず、交換の計画を立ててください。
SSDでも「不良セクタ検査」は同じですか?
SSDはHDDのような回転する磁気ディスクを持ちません。ホストから見えるLBAが内部のNANDフラッシュ上の同じ場所を永続的に指すとは限らず、コントローラが書き込み位置を管理します。HDDの表面検査をSSDにそのまま当てはめるべきではありません。
SSDではメーカーの健全性指標、メディアエラー、予備領域の状態などを確認し、Windowsのファイルシステム問題とドライブ自身の故障を分けて考えます。必要以上の書き込みテストや全面スキャンをする前にバックアップを確認してください。
検査結果を相談先に伝えるための記録
- ドライブの型番・容量・接続方法(USB/SATAなど)
- 症状が始まった時期と直前にあった出来事(落下・停電・異音)
- コピー失敗・フリーズ・接続断が起きた操作
- 取得できたS.M.A.R.T.の項目と確認日時
- 検査した場合のみ、実施範囲・結果・停止地点・LBA
- 必要なデータの種類・バックアップの有無
不良セクタ数が不明でも相談できます。原因を確定させるために、故障が疑われるHDDへ追加の検査を繰り返す必要はありません。
よくある質問
マップに赤いブロックが1つあれば故障確定ですか?
ソフトの色分け条件によります。読み取り失敗が実際に記録されていれば注意すべき兆候ですが、画面色だけで原因や故障部位を確定できません。異音・S.M.A.R.T.・接続状況を合わせて判断します。
LBA番号が分かれば、その部分だけ修復できますか?
LBAは論理位置を示す番号であり、物理的な損傷を直接修理できるわけではありません。データが必要な場合は書き込みを伴う修復を急がないでください。
不良セクタが0なら安心ですか?
その検査条件で問題が観測されなかったことを示すにすぎません。今後の故障や、未検査領域、検査で検出できない問題まで否定するものではありません。
コピーが止まるので何度も再検査してよいですか?
再試行を繰り返すと、負担が増すおそれがあります。失いたくないデータが残っているなら中断し、保全の方法を先に考えてください。
USB外付けHDDでS.M.A.R.T.が表示されないのは故障ですか?
USBブリッジや接続方式によって情報の取得が制限される場合があります。表示されないことだけでドライブ故障と判断できません。ドライブを無理に分解せず、機種の仕様とデータの重要度を確認してください。
CHKDSK /r で不良セクタを直せますか?
CHKDSKはファイルシステムで問題のあるクラスタを扱いますが、損傷した物理部品を修理するものではありません。データが必要な不調HDDでは先に実行しないでください。
HDD-SCANとMIRA-SCAN、いまはどちらを使えばよいですか?
旧HDD-SCANは配布と利用の案内を終えており、MIRA-SCANはWindows用に無料で公開しています。いまの状態確認には、S.M.A.R.T.を表示できるツールやメーカーの診断ツールを使えます。異音や切断がある場合は、どのソフトでもスキャンを始めず、データの保護を先にしてください。
迷ったときは、検査結果の数字よりデータを守る順序で
旧HDD-SCANの不良セクタ検査は、読み取り状況を視覚化し、問題が観測された論理位置(LBA)を記録するための機能でした。しかし色や数値だけで物理的な故障を断定したり、回復可能性を判断したりすることはできません。
異常があるHDDでは検査を止める。失いたくないデータを先に守る。状態の確認はそのあとで、S.M.A.R.T.の表示やメーカーの診断ツールを使う。迷ったときは、この順番で判断してください。技術の仕組みを詳しく知りたい方は不良セクタとは?、旧製品の背景はHDD-SCANとは?を参照してください。



