先に結論:「成功報酬」という言葉の中身は、会社ごとに違います。依頼の前に、次の3つを書面で確かめておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。

  • 「成功」とは、指定したファイルが実際に開いて使えることなのか、何か1つでも取り出せればよいのか。
  • 復旧料金が0円になる場合でも、調査費、作業費、送料などが別にかからないか。
  • 一部だけ戻ったとき、見積もりを断ったとき、作業を始めたあとにやめたときに、それぞれいくら払うのか。

成功報酬制とは:「完全成功報酬」と何が違うのか

データ復旧の成功報酬制は、一般に、復旧が一定の成果に届いたときに復旧料金がかかる仕組みです。ただ、「成功」「完全成功報酬」「No Data, No Charge」といった言葉だけでは、条件は判断できません。何を成果とし、どの費用がその対象なのかは、それぞれの見積書、申込書、利用規約で決まります。

ファイルが1つ戻れば「成功」とは限らない

たとえば、必要な会計データは壊れたままで、古い画像だけが取り出せたとします。契約が「指定した会計ファイルが開けること」を条件にしていれば、これは成功とは言えません。一方、「取り出せたデータがあること」を成果とする契約なら、同じ結果でも請求の対象になりえます。決め手になるのは、依頼前に何を合意したかです。

「失敗なら0円」は、復旧料金の話か、総額の話か

復旧料金が成功したときだけかかる場合でも、媒体の送料、例外的な調査費、分解や部品の手配、出張での作業などは、別の条件になっていることがあります。うまくいかなかったときに払う金額を、「復旧料金」と「そのほかの費用」に分けて確かめてください。

希望のファイルが戻ったかの確認と、料金がかかる条件の確認を、別々に進める判断の流れを示した図
復旧できたかどうかと、支払いの条件を分けて確かめるための模式図。

「戻った」には3つの段階がある

同じ「復旧可能」という言葉でも、何を確かめたのかは違います。ファイル名が読み取れただけでは、中身が使えるとは限りません。文字化けしている、動画が途中で切れる、開けるけれど計算式が消えている表計算ファイルなど、データの種類によって確かめ方も変わります。

段階たとえば注意すること
見つかったファイル名、日時、容量が一覧に出る中身が読めるとは限らない
開けた写真が表示される、文書が開く一部のページや場面が壊れていることがある
使える動画が最後まで再生できる、帳簿の中身が正しい依頼した目的を満たしているかを確かめる

いちばん大事なファイルを先に決める

依頼の前に、「2026年9月の顧客台帳.xlsx」「写真フォルダー/家族2024」「編集途中の動画.mov」のように、場所、ファイル名、更新した時期、優先順位を書き出しておきます。ファイル名を覚えていなければ、フォルダーの場所、撮影した期間、拡張子、だいたいの容量を伝えます。個人情報を含むファイル名は、問い合わせの段階で必要以上に伝えなくてかまいません。

「何割戻ったか」は、目的によって意味が変わる

写真1万枚のうち9,000枚が戻っても、どうしても必要な数枚がなければ目的は果たせません。逆に、必要な帳簿のファイルが1つ無事なら、ほかの一時ファイルが戻らなくても十分なこともあります。件数や容量の割合を「成功率」として、契約上の成果の条件と混同しないでください。

無料診断・キャンセル・復旧できなかったときに残る費用

何が無料かは、会社だけでなく、媒体の種類や作業の内容によっても変わります。「初期診断無料」と書かれていても、災害で傷んだ媒体、スマートフォン、複数のドライブの調査、出張作業などを例外にしている会社があります。受付での無料相談と、詳しい解析を同じものと考えないでください。

費目確認する条件見落としやすい場面
初期診断無料の媒体・故障レベル・台数災害・特殊調査・複数台
作業費・部材費成果の有無にかかわらず発生するか分解・部材手配・技術作業
キャンセル料見積前・見積後・着手後で異なるか作業開始後の辞退
送料・返送料依頼時・不成功時・納品時の負担復旧不可で返却する場合
納品媒体・暗号化新品HDD/USBの代金・提供方法見積書に含まれない納品費
緊急・出張作業通常料金との差と承諾のタイミング当日対応・オンサイト

「復旧できなかった」と「見積もりを断った」は別の話

復旧の結果が出たあとの請求と、作業を始める前に依頼を取りやめた場合の費用は、別々に決められています。見積もりに納得できなかったときに、媒体を返してもらえるか、どの費用を負担するかを先に確かめます。作業を始めたあとの中途解約には、さらに別の決まりがあることもあります。

こちらが了承する前に、有料の作業が始まらないか

診断の途中で思ったより重い障害が見つかり、部品の取り寄せや特殊な解析が必要になることがあります。追加の費用がかかる作業については、作業の名前、新しい総額、その作業をしない場合の扱いを書面で示してもらい、改めて了承する仕組みになっているかを確かめてください。

4社の公開条件を比べる(2026年10月24日確認)

各社の公式サイトで確認できた説明を要約しました。同じ条件で取った見積もりの比較や、優劣の順位ではありません。同じ「成功報酬」でも、無料診断の例外や作業費の扱いに違いがあることを示すためのものです。最新の条件は各社に直接確かめてください。

会社・公式ページ成功の説明別途注意する条件
アドバンスデザイン必要とするデータの復旧を確認して請求スマートフォン等の診断や媒体取り出しの例外
A1データ復旧できなければ復旧費用を請求しないと説明9台以上の媒体、仮想環境、キャンセル前提等の調査例外
ロジテックデータ復旧に成功した場合に支払うと説明災害媒体の調査料、依頼者からの送付送料等
デジタルデータリカバリー希望データの復旧を成功報酬条件として案内障害によって成否にかかわらず作業費が発生する場合

出典は各社の公式ページです。記載は変わることがあり、実際の料金と請求の条件は、見積書と利用規約が優先されます。公開価格の比較は「データ復旧の料金相場と見積もり」で扱っています。

アドバンスデザインとデジタルデータリカバリーの違い

アドバンスデザインは、必要なデータが戻ったことを確かめてから請求すると説明しています。デジタルデータリカバリーは、「成功報酬費」とは別に、障害の内容によって作業費がかかる場合があると明記しています。「復旧できなかった」という結果は同じでも、払うことになる項目は同じとは限りません。

「無料」とはっきり書いているサービスにも例外がある

ロジテックは通常の診断とキャンセルを無料としつつ、災害に遭った媒体の調査には所定の費用を記載しています。A1データも、媒体の台数や仮想環境などの調査に例外を設けています。自分の依頼が例外に当たらないか、送る前、了承する前に問い合わせてください。

申し込む前に聞いておきたいことと、問い合わせ文の例

大事なファイル名、使えるかどうかの確かめ方、追加費用の上限、作業を断ったときの返却の条件まで記録しておくと、あとで「言った・言わない」になりにくくなります。電話で聞いた答えも、メールなどあとで見返せる形で残してください。

問い合わせメールの文例

件名:データ復旧の成功条件と見積もりについて

復旧を希望するのは「写真フォルダーA(2024年分)」と「会計ファイルB.xlsx」です。この2つが正常に開き、中身を確認できたことを「成功」とすることはできますか。一部だけ戻った場合(片方だけ、または中身が壊れている場合)の請求額、復旧できなかった場合・見積もりを断った場合・作業開始後にキャンセルした場合に負担する費用、往復の送料と納品媒体の費用、追加作業の事前了承の方法を、書面で教えてください。依頼の前に、復旧できるファイルの一覧やサンプルをどこまで確認できるかもあわせてお願いします。

ファイル名を覚えていないとき

「2022~2026年の家族写真」「プロジェクト名が入ったPDF」「2026年8月に更新した売上表」のように、時期、拡張子、保存していた場所を伝えます。復旧できたファイルの一覧から探す方法と、見つからなかったときの支払いの条件を相談してください。

答えがあいまいなとき

「基本は無料です」「たぶん全額はかかりません」だけでは、どの例外が当てはまるのかわかりません。見積もりの総額、成功と判断する対象、復旧できなかったときや断ったときの請求、了承なしにはしない作業を具体的に聞き、それでもはっきりしなければ、依頼の判断を保留してかまいません。

契約後に起きやすい食い違い

一覧にファイルは出ているのに、開けない

ファイル名やサムネイルが見つかっても、本体のデータが無事とは限りません。写真、文書、動画、データベースなど必要な種類に合わせて、サンプルを開いてもらう、指定したファイルを確かめてもらうといった方法を相談します。「見つかった」と「使える」を混同しないでください。

見積もりのあとで「物理障害だったので追加料金」と言われた

あとから障害の重さがわかること自体はありえます。そのときは、最初の作業範囲、追加の作業が必要な理由、新しい税込の総額、断った場合の費用を確かめます。妥当かどうかを判断するためにも、前の見積書と診断結果は保存しておいてください。

復旧できなかったので、媒体を返してほしい

返却できるか、送料はどうか、調査や作業で媒体に手が加わったか、取り外した部品や複製したデータをどう扱うかを確かめます。別の会社にも診てもらう場合、物理障害のある媒体に何度も電源を入れるのは危険です。次の会社には、すでに行われた作業を正確に伝えてください。

3つの仮定のケース

契約の読み方を説明するための仮定の例で、特定の会社の実際の案件や実績、判例ではありません。

写真は100枚戻ったが、必要な動画は戻らなかった

写真100枚が一覧に載っていても、いちばん大事なのが動画1本なら、成果の評価は変わります。「動画が正常に再生できた場合だけ成功」「写真だけなら一部成功として別の金額」のように、大事なデータに合わせて合意しておくと安心です。

パソコンは壊れたが、HDDは普通に読める

パソコンが起動しなくても、HDDが正常に読めるなら、復旧の技術作業ではなく、データのコピーや移行のサービスで足りるかもしれません。提示された料金が、診断、コピー、データ復旧のどれとしての料金なのかを確かめます。読み取りの途中で異音やエラーが出たら、作業を止めてください。

診断の途中で、重い物理障害がわかった

最初は論理障害だと思われていても、ヘッドや記録面の故障が疑われることがあります。「別の見積もりに切り替える」「部品を手配する前に改めて了承を取る」「依頼をやめたら返却する」といった条件があるかを先に把握しておきます。急いでいても、高額な変更を電話だけで決めないようにしてください。

見積書で照らし合わせる項目と、総額の試算

会社を比べるときは、媒体と希望の納期をそろえ、金額だけでなく、受け取れるものと、うまくいかなかったときの条件を並べます。見積書、メール、申込書の内容を確かめるための表です。

確認事項確認する質問記録しておく内容
成功の定義何をもって請求対象の成功ですか対象ファイル・確認方式
部分成功一部だけ戻ったらいくらですか全額・減額・請求なしの条件
診断・特殊作業成功しなくても支払う作業はありますか作業名・上限・同意時点
キャンセル見積前後と着手後で条件は違いますか取消可能な時点と請求
総支払額税込、送料、納品媒体込みですか成功時・失敗時の想定総額
納品検証代金確定前に重要ファイルを確かめられますかリスト・サンプル・確認期限
情報管理データの保管・消去・再委託はどうなりますか守秘条件と消去予定

契約前に試算しておく2つの総額(架空の例)

たとえば、復旧料金66,000円、送付の送料1,500円、納品媒体4,400円の見積もりなら、成功したときの総額は71,900円です。もし結果にかかわらず特殊調査費22,000円がかかる条件なら、うまくいかなかったときにもその作業費と所定の送料が残ります。数字は料金の構造を説明するための仮定で、どこかの会社の見積額ではありません。

復旧料金、作業費、送料、納品媒体の費用を分けて、見積もりの総額を確かめる説明図
成功報酬と別の費用を分けて総額を考える模式図。

会社の機密データや個人情報を預けるとき

データ復旧では、個人情報や会社の機密が入った媒体を外に預けることになります。成果や料金だけでなく、誰がデータを見られるのか、解析用のコピーを何日持つのか、いつ消すのか、さらに別の会社に作業を出すことがあるのかも確かめてください。個人データの扱いを外部に委託する事業者には、法令に基づいて委託先を適切に監督することが求められる場合があります(個人情報保護委員会のガイドライン(通則編))。

秘密を守ることと、結果を確かめることは両立できる

中身をすべて見せられない場合でも、許可したファイルだけを開いてもらう、ファイルの一覧を見せてもらう、サンプル画像の一部を隠してもらう、といった方法を相談できます。秘密保持契約、アクセス記録、データ消去の証明を出せるかどうかは、会社によって違います。

外部への委託があるか

特殊な障害で外部の施設が作業する場合は、委託の有無、媒体の移動、海外に出る可能性、連絡の窓口、事故のときの対応を確かめます。

復旧したデータを受け取ったら

納品された媒体が届いても、それだけで全部が無事に戻ったとは言えません。別のパソコンなど安全な環境で、写真、PDF、動画を何点か開き、必要なフォルダー、更新日時、データベースや帳簿の中身が合っているかを確かめます。全部を開くのが現実的でなくても、優先したファイルは必ず確かめてください。

あわせて、納品ファイルの一覧と数、指定したファイルが開けるか、使える版か、別の媒体にもバックアップを取ったか、納品媒体の暗号化と解除の方法、業者側に残る複製の削除予定を確かめます。故障したHDDは、データが戻ったあとも大事な保存先としては使わないでください。

よくある質問

成功報酬制なら、失敗したときは完全に0円ですか?

復旧料金が0円でも、送料や特殊調査費、作業費などが別に決められていることがあります。見積書で、うまくいかなかったときの支払いの総額を確かめてください。

データが一部しか戻らなくても、全額払うのですか?

一部だけ戻ったときに全額か、減額か、請求なしかは、契約によって違います。依頼前に、大事なデータと支払額を記録しておいてください。

無料診断のあとで、キャンセルできますか?

見積もりを示す前か後か、作業を始めたあとかで、決まりが違うことがあります。キャンセルできる時点、作業費、媒体の返送料を確かめます。

見積もりより高い追加料金がかかることはありますか?

作業中に別の障害が見つかり、見積もりがやり直しになることはあります。増える作業に事前の了承が要るか、新しい総額と断った場合の費用を書面で確かめてください。

業者に預けたデータは、いつ消されますか?

保管期間、複製した媒体、委託先、消去の手順は、会社の契約条件で確かめてください。機密データなら、秘密保持契約や消去証明を出せるかも問い合わせます。

参考情報

復旧の条件を比べる記事としては、ほかに「データ復旧の料金相場と見積もり」「データ復旧業者6社の比較」があります。媒体の扱いに迷っているなら、先に「HDDデータ復旧の方法」で最初の対応を確かめてください。